初秋の五個荘金堂町の風景

金堂まちなみ保存会

2019年09月25日 19:30



 台風一過、ようやく秋の到来を肌に感じる頃となりました。
 いよいよ ” ぶらっと五個荘まちあるき " は、今度の日曜日までに
近づいてきました。
 準備も最終の追い込みに入ったようです。秋晴れの良いお天気になることを祈るばかりです。 

 きょうは、五個荘地区の初秋の風情を拾ってみました。 
 秋を代表する草木の花と云えば、萩、ススキ(薄)、彼岸花が頭に浮かびます。


<弘誓寺の庭に咲く萩の花(紅色)>


<萩の花(白色)>

 
 日本人にとって、萩はさまざまな意味で昔から象徴性の豊かな植物であると思います。 万葉集で一番多く詠まれた植物は桜ではなく、なんと萩の花が一番多いのです。
万葉集には、約4500首の歌が数えられ、その約3分の1が何らかの植物を詠んだ歌といわれています。
そしてその植物の種類は、150種をこえているようで、調査によるところでは、歌の数最高を誇るのが、萩の花で137首、次いで梅が119首、桜は意外と少なくて42首が詠まれているのだそうです。 萩の花の開花期は、米、粟、稗などの収穫期と重なったため、豊かに咲きこぼれる萩の花は、豊穣の秋のシンボルであったのでしょうね。

 ところで、古老の庭師によると、萩は古い枝には花はつけず、春に新しく出た芽から伸びた枝にだけ花をつけるそうです。そのため、翌秋も花を愛でたいのなら、冬のうちにばっさり枝を剪定してしまう必要があるそうです。かつては春先に「萩原を焼き払う」ならわしがあったそうで、「萩の焼け原」を詠んだ和歌も少なからず見ることが出来ます。 その一つ、

” 春焼きし其日いつとも知らねども嵯峨野の小萩花咲きにけり ”

 燻ぶる焼け野原にたくましく蘇る萩の芽は、生命の復活の象徴でもあったのでしょうね。


<花札にも猪と共に萩の花が>

 ところで、皆さんよくご存じの『花札』の中にも萩の花がありました。花札の歴史は安土・桃山時代の「天正かるた」、江戸時代上期の「ウンスンカルタ」にのぼると云われていて、江戸時代中期には、既に現在使用している花札ができたとも言われています。


<ススキの穂が出ると吹く風も涼やかに感じます>


<ススキも古くは万葉集からも数多く収録されています>

” 我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫くものにもが (万葉集)  

<風に揺れるススキの穂>

 ススキは、イネ科ススキ属の植物で、尾花ともいい秋の七草の一つであることは、皆さんもよくご存じのところですが、
 中秋の名月に、よくお団子とススキが飾られますが、どうしてススキなのでしょうか? 一説によると、嘗ては、中秋の名月の頃では、未だ稲穂に十分な実が入っていなかったので、ススキの穂で稲穂の代わりをしたというのです。現在では、コメも改良に改良を重ねられたことにより、収穫がとっても早くなりましたので、稲穂を飾ってもおかしくはないのです。ススキが今も使われるのは、その名残りという訳なのです。


<炎のような真っ赤な花を咲かせる曼珠沙華>


 日本では秋の花として親しまれる彼岸花(別名 曼珠沙華 )は、「お彼岸さん」の時期に咲く花として知られています。
でも、今年はその彼岸花の花の咲くのが、全国的に一週間から十日程遅いそうです。異常気象によるものでしょうか。
 彼岸花は、「先ず花が咲き、後から葉が伸びる」という通常の草花とは逆の生態を持っています。その葉と花を一緒に見ることが出来ないことから、「葉見ず花見ず」と呼ばれ、昔の人は恐れをなして、死人花(しびとばな)とか地獄花などと呼ぶことがあったそうです。


<独特の花の形をした曼珠沙華>

彼岸花の花は、仏教では伝説上の天の花で、純白で、見る者の悪業を払うといわれていて、天人が雨のように降らすとあります。日本では、鮮紅色の花を咲かすのが多いようです。


<女郎花(オミナエシ)の花>


<男郎花(オトコエシ)>

 最後は、女郎花(オミナエシ)と男郎花(オトコエシ)の花です。日当たりのよい草地に生えている。嘗ては、たくさん見られた花ですが、自生地は非常に減少していると報告されています。日本では、万葉の昔から愛好され切り花、漢方としても用いられてきています。男郎花は、女郎花属に属し、白い花を付けます。

 今は、諸外国との交流が容易で、植物の種子等が、コンテナの中に紛れ込んだり、靴の裏に付いて国内に入り込んだりと、国内に簡単に入ってきて、今までの植生が、短期間で破壊されてしまうことがあります。最近の一例としては、セイタカアワダチソウの繁茂でしょう。この植物の強力な成長力は河川敷や土手の植生を一変させてしまいました。 
 どこの国に行ってもあまり変わり映えのしない花が咲いているので良いのでしょうか。

 日本の景観の持つ良さが消えて無くなるのも、そう遠いことの話ではないのかもしれません。
 




歩みの遅い しゃくとりむし でした。


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